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建物の寿命を延ばす築40年の住宅リフォーム
M様邸 ハウスデータ
築年数 | 42年 |
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構造 | 木造2階建て住宅 |
内容 | 1・2階のスケルトンリフォーム |
地域 | 東京都墨田区 |
思い出いっぱいの家の雰囲気をそのままに。
M様邸は築42年になる木造2階建て住宅です。今回、耐震補強を含めたスケルトンリフォームを行うこととなりました。
M様とご家族を長年見守ってきた大切なお住まいが、思い出いっぱいの雰囲気をそのまま残しながら、機能的で快適な住空間へと生まれ変わります。
Before
M様邸は、墨田区の閑静な住宅街にあるお住まいです。 ご家族とともに40年の月日を過ごしてきた大切なお家をお預かりし、リフォームすることになりました。
「家の性能を上げたい」というM様のご要望に合わせて、最新の技術で耐震補強を行い、断熱性を高めて、間取りも大幅に変更します。
M様には、お打ち合わせから工事中まで、多くのお心遣いをいただきました。感謝申し上げます。
「建物の寿命を延ばし、性能の高い快適な住宅へ」をコンセプトに、ご家族がこれから先もずっと安心して暮らせる家造りが始まりました。
建物をスケルトン状態にして現状を把握し、元々の構造を生かした設計を行います。 既存の柱をできるだけ残して、建物の強度を損なわないように配慮しながら、M様ご家族のご希望に合わせた間取りをプランしました。
1階 Before
1階 After
2階 Before
2階 After
耐震補強で大切なのはバランスです。建物全体をバランス良く適切な配分で補強することで、地震に強い家となります。
エコリフォームでは、経験豊富な一級建築士が建物を点検した上で耐震診断を行い、その結果に基づいて最善の耐震補強計画をご提案します。
※耐震診断について詳しくは、耐震リフォームの方法をご覧ください。
今回、スケルトンリフォームを行うことで、通常は手を入れることが難しい建物の根幹部分を念入りに点検し、改善することが可能になります。
築40年が経過しているM様邸ですが、建物内部の状態を把握して、それぞれ適した処置を行うことで、さらに建物の寿命を延ばします。
毎日の生活の基盤となる家が、快適な空間になるように、住宅の性能を高めます。
夏は涼しく、冬は暖かく、室内の動線もスムーズで、陽の当たる場所に洗濯物を干せる...。そんな暮らしを実現するプランです。
リフォームプランの3つのポイントごとに、工事の様子をご紹介します。
基礎の補強が必要な箇所に、「SRC工法」を用いた補強を施します。
SRC工法とは
炭素繊維シートと炭素繊維積層板を用いて、専用の接着剤で補強を行う布基礎補強材です。
コンクリートの基礎に施工すると、一般的なコンクリート基礎の約2倍の強度を持たせることができます。
建物の耐震性を高めるため、壁にも適切な補強を行い、地震に強い耐力壁にします。 耐震診断の結果に合わせて、必要な箇所に耐力壁を配置することで、建物のバランスを良くします。
既存の壁は、内部から筋交いを施工し、構造用合板で補強します。 新しく設ける壁は、内部からの補強に加えて、外部からも補強を行います。
建物の構造上、床も重要な部分と言えます。
M様邸は築40年が経過しているため、床の下地に経年劣化が見られました。 必要に応じて木材を新しいものに交換し、しっかり補強作業を行います。
今回のリフォームで、1階にあった浴室を2階に移設します。 浴室は総重量が1トン近くになるため、新しく集成材の梁を架けて、浴室を支える1階天井を補強しました。
集成材とは
集成材は何枚もの木を重ねて積層にした木材です。品質が均一なため、通常の木材の1.5倍の強度となります。
柱を梁や桁、土台にしっかりと接合するため、必要な箇所に耐震金物を設置しました。
耐震金物は、地震の揺れによって柱が抜けてしまうことを防ぎます。
2階洋室の隅角部(隅の部分)は、耐力壁を配置するのが望ましいのですが、オープン収納になっていました。 そこで、耐震金物のコボットを設置しました。
コボットを設置した箇所は、耐力壁があるのと同等の強さを持ちながら、オープンな状態を保てるので、奥のスペースは棚として利用することができます。
※詳しくは、コボットをご覧ください。
リフォーム前のM様邸は瓦屋根でしたが、今回のリフォームで軽量なカラーベストに葺き替えます。
屋根の重量を軽くすると建物への負担が減り、建物の寿命を延ばすことにつながります。 地震対策としても軽い屋根はおすすめです。
(Before)
建物を守るためには、建物内部に雨水や湿気の侵入を防ぐことが大切です。 外壁の下地材としてラスカットを採用し、セラミクリーンで塗装を行ってしっかり防水し、水の侵入を防ぎます。
ラスカットとは
台板、特殊防水被膜、特殊セメント凹凸層の3層構造のパネルで、耐水性に優れています。
加えて、建物の耐震性を高める効果もあります。
セラミクリーンとは
弾性セラミックシリコン樹脂を用いた塗材で、耐久性が高いのが特徴です。
透湿性に優れ、内部結露の防止にも役立ちます。
ガス管は経年で傷みが見られたため、新しく引き直しました。 なお、公道から宅地内までの工事はガス会社にお願いしました。
配管は、水まわり器具の水栓を吸水ヘッダーに接続するヘッダー方式を採用しました。 ヘッダー方式は水圧が一定になるので、同時に使うと水量が少なくなることがありません。 また、継手のない架橋ポリエチレン管を使用しているため、水漏れの心配もありません。
鉄製のベランダは、経年劣化でサビが多く見られました。 そのままでは危険なため、メンテナンスフリーなアルミ製のベランダに交換しました。
アルミは軽量なため、建物への負担も少なくなります。
(Before)
床下は湿度が高くなりがちですが、床下の湿気を放置すると、シロアリ被害や建物の劣化につながります。 そこで、ゼオライトを採用して床下を除湿しました。
ゼオライトとは
ゼオライトは調湿効果のある天然の鉱物で、植物の肥料や浄水システムにも使われています。
臭いや化学物質も吸着する費用対効果の高い調湿材です。
(Before)
リフォーム前は断熱材が入っていませんでしたが、今回のリフォームで断熱材を入れて、住宅の性能を高めます。 スケルトン状態にしてから壁全面と各階の床に断熱材「パーフェクトバリア」を施工し、断熱性を上げました。 冷暖房効率が良くなるだけでなく、結露対策にもつながります。
※詳しくは、パーフェクトバリアをご覧ください。
サッシをペアガラス(複層ガラス)に交換することで、断熱効果がさらに上がり、室内の温度を快適に保つことができます。 熱の出入りが多い窓の断熱性を上げると、外気から影響を受けにくくなるので、ランニングコストが軽減されます。
ペアガラスは2枚のガラスがセットされていて、断熱性や遮音性に優れ、気密性を高めます。 アングル(サッシを窓枠に固定する部材)が樹脂製なので、結露を抑える効果もあります。
(Before)
M様邸では電気配線が古い単相2線式になっていたため、100Vしか利用できず、アンペア数も少なくなります。 電気の使用量が増えている現代の暮らしに合わせて、主流となっている単相3線式に変更しました。
また、キッチンはガスコンロですが、将来的に変更できるよう、IHクッキングヒーター用のコンセントを設けました。
(Before)
M様邸のスケルトンリフォームが完成となりました。お部屋ごとにご紹介します。
ダイニングキッチンの床には、自然素材のコルクタイルをおすすめしました。
空気を含むコルクタイルは保温性が高く、足元が温かく感じられます。 水に強く、弾力性があり、膝への負担も少ないので、立ち仕事の多いキッチンにぴったりの素材です。
プランご提案時に作成したイメージパースで、M様に完成のイメージをお伝えしていました。 階段部分がパースそのままにできあがっています。
Before
キッチンは、タカラスタンダードのホーローシステムキッチンを選ばれました。
ホーローは、金属にガラス質をコーティングして高温で焼いたもので、汚れやキズが付きにくく、熱にも強い素材です。 磁石がくっつくので、フックなどを設置して、キッチンまわりをすっきり使えます。
インテリアコーディネーター
薄井 歩
リフォーム前のキッチンもタカラスタンダードのホーローキッチンで、20~30年使われていたそうです。 今回のリフォームでは、お母様がやさしいピンク色のシステムキッチンを選ばれました。
タカラスタンダードではピンク色のキッチンが人気だそうで、実際に、私たちのお客様もピンクを選ばれる方が多いんです。 ホーローの独特の質感に淡いピンクが映えて、何とも言えない良い雰囲気ですね。
タカラスタンダードのホーローキッチンについては、こちらのQ&Aも合わせてご覧ください。
ダイニングキッチンの隣にある和室はガラッと変えるのではなく、慣れ親しんだ和の雰囲気を残してリフォームしました。 プライベートルームですが、普段は引き戸を開けて、オープンなスペースとしてお使いになるそうです。
柱や壁はそのまま活かし、珪藻土仕上げの壁は、リフォーム前のじゅらく壁と似た色合いに。 思い出いっぱいの雰囲気はそのまま、調湿性の高い珪藻土で、より快適で安らげる空間に仕上げました。
Before
天井の竿縁(天井板を支える棒)は、桜の木が丸のまま使われていました。
今では見かけることが少ない貴重なものなので、傷んだ部分だけを交換して竿縁を再利用し、天井板のみ張替えました。
和室の入口の建具は、ガラスを安全なアクリル板に交換して再利用しました。 新しいものにはない雰囲気がありますね。
収納は板畳をそのまま残し、上半分にお仏壇スペースを設けました。
インテリアコーディネーター
薄井 歩
リフォーム前のお家は、M様ご家族の思い出がたくさん詰まっていました。 「新しくなっても使えるものは、また使いたい」とのご希望で、使える柱や建具などはできるかぎり再利用しています。
木部は長年の間に深い色味となり、珪藻土の壁や畳、無垢材の枠との相性も良く、デザインもまとまりました。 リフォームで新しくなったのに、どこか懐かしい雰囲気の和室になりました。
玄関には、青みを帯びた墨の風合いを再現した墨色の引き戸が選ばれました。 トステム(現LIXIL)製の和風モダンな印象の扉です。
リフォーム前は玄関の段差が45cmありましたが、玄関ホールの床の高さを工夫して、上り下りの負担が少ないようにしています。
床はダイニングキッチンと同じ、コルクタイルで仕上げました。 寒い冬に帰宅したときでも、足元がほんのり温かく感じます。
Before
昔ながらの急な階段は、ゆるやかに架け替えました。 無垢材をオイル塗装で仕上げた階段、やさしい足触りで、木のぬくもりを存分に味わうことができます。
2階にお荷物を搬入してから、手すりを取り付けて、安全にゆったり上り下りできるようになりました。
Before
階段やトイレなど、居室以外の照明は同じシーリングライトで揃えました。 同じ電球を使うため、交換が楽で、費用面でもメリットがあります。
また、玄関には、飾った絵やお花を照らせるスポットライトを設置しました。 全体照明としても使えるスポットライトになっています。
インテリアコーディネーター
薄井 歩
M様邸で採用した小さなシーリングライトは、裸電球のようで懐かしい雰囲気がします。 セード(カバー)がないシンプルなデザインなので、光が周囲を効率よく照らします。
玄関と同じスポットライトを、2階の洗面ホールにも設置しました。 お母様は、お花や飾り物をさりげなく、かわいらしく飾るのがとてもお上手なんです。 おしゃれで遊び心がありますね。
トイレは位置を変えて、玄関を入った左側に設けました。 壁の下半分に無垢材を張り、明るく落ち着いたデザインになっています。 トイレの機器はまだ十分使える状態だったので、再利用しました。
トイレ正面には、奥行きの浅いカウンタータイプの収納を、無垢材で造作しました。 トイレットペーパーや洗剤などをしまうのに便利です。 カウンターに小物を飾って、素敵なコーナーを作ることもできますね。
また、トイレのドアの足元には、暗くなると点灯するフットライトを設置しました。 夜中にお手洗いに行かれる時も安心です。
Before
2階洋室の床は、カバザクラの無垢フローリングを採用しました。 カバザクラのおとなしい木目が上品で明るい雰囲気のお部屋になっています。
カバザクラは広葉樹で硬く、キズが付きにくく丈夫な素材です。 さらにUV塗装を施したので、汚れもサッと落ち、お掃除もらくらくです。 また、無垢フローリングの蓄熱効果で、冬でも一度暖まれば、ぬくもりが長続きします。
Before
右側の収納は、3枚引き戸で大きく開くタイプ。中に棚などは造らず、M様がご自身で工夫してお使いになるそうです。
左側の収納はお布団をしまうため、奥行きのあるタイプに。 扉には、耐震ラッチを取り付けました。耐震ラッチは地震の際に扉をロックして、中身が飛び出さないようにする器具です。
収納の右手には、素敵な本棚を造り付けました。 実はこの本棚の棚板、リフォーム前はキッチンの床に使われていた板なんです! 意外なところに再利用しています。
Before(キッチンの床)
インテリアコーディネーター
薄井 歩
「キッチンの床板を、何かに使いたいのですが...」というM様のご要望を受けて、床板が見事に本棚の板として蘇りました。 本を読むたびに、思い出に浸ることができますね。
本だけでなく、たくさんお持ちのCDも、すっきり収納できました。 使い込まれていい色合いになった板が、新しい場所で再度活躍してくれています。
収納の建具は、シナ合板のオーダーメイドです。 ワトコオイルを使用して、木材内部に浸透させるオイルフィニッシュ仕上げにしました。 表面に塗膜を作らないので、木材の持つ本来の美しさ、樹美を感じられます。
※詳しくは、オイルフィニッシュ向け自然塗料オイルをご覧ください。 経年でますます味わいが出てくるのが楽しみです。
建具の枠などもすべて天然木を使用しています。 天然木には調湿効果があり、結露やカビを防止して、住宅の寿命を延ばすことにもつながります。
Before
コボットを設置した棚も、ちゃんと収納スペースとして使えるようにプランしています。 オープンでありながら、耐力壁と同等の強さを持つコボットならではの利用法です。
M様はパソコン関係が得意とのことで、コンセント類をまとめて棚の奥に設置しました。 棚の横にデスクを置いて、パソコンの周辺機器や、デスク周りの細々したものなどをまとめて棚へ収納できます。
リフォーム前は浴室が1階にあり、0.5坪のコンパクトサイズでしたが、リフォーム後は2階へ移動し、足を伸ばして入れる1坪サイズになりました。浴室入口にあった段差もなくなったので、安心して入浴できます。
ユニットバスはタカラスタンダード製のシステムバスを選ばれました。 浴槽から洗い場、天井まですべて保温材が入っているので、浴室全体がトータルで保温されます。 ホーローパネルでお手入れも簡単。使えば使うほど良さを実感できるユニットバスです。
Before
インテリアコーディネーター
薄井 歩
M様は、墨田区の高齢者自立支援住宅改修助成事業をご利用になり、改修費用の助成を受けられました。
地域ごとに高齢者の自立支援を目的とした助成制度が設けられているので、リフォームの際に確認してみることをおすすめします。
洗面と洗濯機置場もまとめて2階に移動しました。広々とした洗面ホールにある洗面台は、タカラスタンダードのホーロー製です。
隣の洋室への扉は、透明性が高いポリカーボネートの引き戸なので、空間に広がりを感じられます。 ポリカーボネートは、衝撃に耐える強さがあり、ガラスの建具より安全に使えます。
Before
洗濯機置場は脱衣室を兼ねているので、手すりとしても使えるタオルかけを設置しました。 出窓はリフォームされたばかりとのことで、そのまま使っています。
天井には室内干しに便利なホスクリーンを取り付けました。また、スポットライトで飾った絵などを照らすことができます。
外壁をセラミクリーンで仕上げ、まるで新築住宅のように蘇りました。 セラミクリーンのような環境にやさしい塗材を選択するのも、環境貢献の一つですね。
雨樋や屋根、ベランダもすべて新しいものに交換しました。 ブロック塀を撤去してオープンなデザインにすることで、明るいイメージに変わりました。 玄関横の土間部分は自転車を置くスペースとしてお使いになります。
Before
玄関前に設置したのは、表札にインターホン、ポスト、ライトまでが一つにまとまった機能的なエントランスポール「アーキフレーム」です。 M様が最適なパナソニックの製品を探してくださいました。
表札やポストはどんなものにするか、どこに設置するか、意外と悩むものです。 アーキフレームはすっきりしたシンプルなデザインで、外観のイメージともぴったりですね。
お引渡し後にM様が「天水尊(てんすいそん)」という雨水タンクを設置されました。 地元・墨田区の方が開発されたもので、この製品を選ばれたそうです。取り付けも開発者の方がわざわざ来てくださったんだとか。 現在はシップスレインワールド株式会社で後継製品を取り扱っているようです。
雨水を溜めておいて、植物の水やりや洗車などに使えるのが雨水タンクです。電気などのエネルギーは不要なので、とてもエコな製品です。 墨田区では雨水タンク設置の助成制度が設けられていて、M様もご利用になりました。 雨水タンクの設置をお考えの方は、お住まいの自治体に助成制度がないか、確認してみると良いでしょう。
リフォーム後のご感想
H様より
リフォームを終えて引っ越してから、早くも1ヶ月が過ぎました。おかげさまで大変快適に暮らしております。
先日、地震がありましたが、電灯が揺れているのを見るまで、全く気がつきませんでした。 以前はどんなに小さな地震でも、大変気になったものです。建物が頑丈になったのを実感しています。
近所の方と顔を合わせるたびに、「すごく綺麗になったね」「良い業者さんだったね」などと声をかけられました。 母と食事する時にも、「思い切ってリフォームして良かったね」「エコリフォームさんに頼んでよかったね」などと話しています。
この度は、どうもありがとうございました。
リフォームアドバイザー
塩谷 理枝