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1階が駐車場のピロティ形式のお住まいを耐震補強

1階が駐車場のピロティ形式のお住まい耐震補強

T様邸 ハウスデータ

構造木造3階建て住宅(ピロティ形式)
内容耐震補強リフォーム
地域東京都世田谷区

1階に駐車場があるため、1階部分の壁の一面がなく、コの字型になっている建物を「ピロティ形式」と呼びます。 家の敷地が広くなくても、敷地内に駐車場を設けることができる省スペースな建物ですが、壁の一面がないことから、耐震性は低くなってしまいます。

駐車場はそのまま、仕口ダンパーを使って、ピロティ形式のお住まいの耐震性をアップしたリフォーム事例をご紹介します。

ピロティ形式のイメージ

リフォームアドバイザー
塩谷 理枝

世田谷区にあるT様邸は、建物の1階部分が駐車場になっているタイプのお住まいです。 住宅が密集している都内では珍しくないピロティ形式ですが、耐震性に問題がある建物も多く見られます。

T様もご自宅の耐震性に不安を感じられていたそうで、以前にエコリフォームでリフォームされた方からのご紹介で、耐震リフォームを行うこととなりました。 ご依頼をいただき、誠にありがとうございます。

耐震補強プラン

建物前面にある開口部の左右に、仕口ダンパーを3つずつ設置します。 また、新しい耐力壁を造るのに合わせて、クローゼットも新設する計画です。

施工責任者
一級建築士
塩谷 敏雄

耐震面から考えると、建物の前面が開口部になっていることは、やはり大きな問題です。 建物前面に壁がないことで、図のタテ方向の強度が不十分になってしまっていました。

これを補うため、一番不安な開口部に仕口ダンパーを取り付け、家の内部にも新しい耐力壁を造ります。 これで建物全体の強度が上がり、地震で建物が倒壊する危険性もぐっと減ります。 駐車場は使える状態のまま、地震に強い建物にする耐震補強計画です。

仕口ダンパーとは?

開口部に使うのは、建物を倒壊から守る耐震補強金物「仕口ダンパー」です。 仕口(しくち)は、柱と梁の交点を指す建築用語です。仕口ダンパーは名前の通り、仕口部分に正しく設置することで、建物の耐震性を高めます。

仕口ダンパーは、地震の揺れを分散する「制震」の考えで開発され、2枚のステンレス板の間に粘弾性体を挟み込んだ構造になっています。 この粘弾性体が柔軟に動いて地震の揺れを分散し、地震による建物の倒壊を防ぎます。

壁の無い面を、壁と同等の強度に

耐力壁の量を「壁量」と呼び、15cmの仕口ダンパーは、1個あたり25cmの壁量として計算することが可能です。 仕口ダンパーを2箇所に付ければ50cm、4箇所に付ければ100cmの壁量となり、壁があるのと同等になります。

つまり、壁の無い面であっても、十分な数の仕口ダンパーを正しい位置に設置すれば、壁があるのと同等の強度を持つことになるのです。 T様邸のようなピロティ形式の建物の開口部を補強するには、最適な装置です。

※詳しくは、仕口ダンパーをご覧ください。

耐震補強工事の様子

仕口ダンパーの施工

今回、T様邸では2種類の大きさのダンパーを使用することにしました。 最も補強が必要な開口部には、30cmの仕口ダンパーを左右に1つずつ、計2つ設置します。

建物の奥に向かって、さらに2つずつ、計4つの仕口ダンパーは15cmサイズのものです。 表から目立つ箇所はデザインの良い鋳物タイプ、見えにくい箇所はステンレスタイプを取り付けます。

開口部の仕口ダンパーも目立ちますが、30cmサイズには鋳物タイプがないため、ステンレスタイプを設置します。

30cmの仕口ダンパーを取り付けます

開口部に30cmサイズの仕口ダンパーを設置します。 仕口ダンパーは、柱と梁の交点に直接施工しなければならないため、一部を壊して設置することになります。

設置箇所の大きさに合わせて、柱のタイルを丁寧に壊します。 天井部分はすぐ梁になっているので、壊さずに済みました。

キズをつけないように注意しながら、仕口ダンパーを取り付けます。

開口部の左右に仕口ダンパーが設置され、壁があるのと同等の強度になりました。

15cmの仕口ダンパーを取り付けます

建物の奥に向かって、15cmの仕口ダンパーを設置します。 こちらは天井内部に設置する必要があるため、施工のために壊す範囲が大きくなっています。

天井を壊して、中の構造が見える状態にしました。

仕口ダンパーを仕口に直接しっかりと取り付けました。

こちらは鋳物タイプの仕口ダンパーです。

設置した箇所をきれいに閉じて完成です。

耐力壁の新設

強度を高めるため、室内にも耐力壁を新設することになりました。 ただ壁を造るだけでは邪魔になってしまうため、T様とご相談の上、壁を利用して新しいクローゼットを造作することになりました。

耐力壁を新しく造作する場合は、耐力壁が建物の構造部分にしっかり結合される必要があります。 天井の一部を壊して内部の構造部分を露出させ、構造用合板を用いて、規定されている幅60cm以上の耐力壁を造ります。

天井を壊し、新しい柱を構造部分にしっかり結合させます。

構造用合板で幅60cmの耐力壁を造りました。

クローゼットの形に整えていきます。

奥様がお選びになったおしゃれな白い扉を付けて、素敵なクローゼットが完成しました。

施工責任者
一級建築士
塩谷 敏雄

T様の耐震補強リフォームは2日間で完了しました。 小規模の工事ですが、補強の効果は実感していただけると思います。

建物の構造部分が関わる耐震補強は、完成すると見えなくなる箇所に手を入れる工事となります。 建物の内部がどのようになっているか、一般のお客様にはわからないため、どのリフォーム業者に頼むべきか迷われるところかと思います。

そんな中、エコリフォームを信頼して、大切なお住まいの耐震補強をお任せくださったことに感謝しております。 この度は誠にありがとうございました。


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耐震補強リフォーム事例