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昭和30年代の町屋風のお住まいを耐震補強
S様邸 ハウスデータ
築年数 | 52年 |
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構造 | 木造2階建て住宅 |
内容 | 屋根の葺き替え、耐震・内装リフォーム |
地域 | 東京都江東区 |
最初のリフォームから7年後、再度リフォームをご依頼いただきました。
S様は深川の大工さんが造った中古住宅を購入し、昔ながらの雰囲気を活かして町屋風にリフォームしたお客様です。 この家での暮らしを大変気に入って、今後も長く暮らすために耐震補強を行いたいとお声がけくださいました。 東日本大震災が起こったこともあり、改めて耐震リフォームの必要性を感じたそうです。
最初のリフォームでは、予算の範囲内で耐力壁を増やして建物の強度を保つ補強を行いました。 今回、屋根を葺き替えて耐震性を上げながら、採光性・断熱性も改善し、より安心で快適なお住まいへとリフォームします。
第1期工事として行ったリフォームの様子はこちらから。
S様邸の屋根は建築当初からの瓦屋根でした。 瓦屋根は日本の風土に合った素材ですが、重量があるのが難点です。
軽い屋根より重い屋根の方が、地震の時に大きく揺れます。 上に重りがついた振り子と同じように、重りが重いと揺れが大きくなってしまうのです。
前回のリフォームでは見送りましたが、今後長く住むことを考えて、軽い屋根に葺き替え、建物の耐震性をアップさせます。 屋根材は軽量なアスファルトシングルに変え、瓦の1/5程度の重さになります。
※屋根の耐震補強については、耐震リフォームの方法をご覧ください。
屋根の重さによって、建物の揺れ方が変わります。
S様邸は都心の住宅密集地にあり、両隣からの採光がほとんど望めません。 そこで、屋根の葺き替えと合わせて、天窓を設置することにしました。
前回のリフォームで、2階のフリースペースに半透明の床を設けて、2階から1階へ光を届ける工夫をしました。 天窓を設置することでその効果が倍増し、よりたくさんの光を取り込めるようになります。
また、夏の太陽光で2階が熱くなるのを防ぐため、天窓にはLow-Eガラスを採用しました。Low-Eガラスは熱を遮り、光だけを通す性能があります。
※詳しくは、高機能窓ガラスをご覧ください。
天窓から2階床を通って1階まで光が届きます。
天窓からの雨漏りに注意!
天窓は屋根に穴を開けて設置するため、慎重に工事しないと雨漏りを招き、住宅の強度が低下する恐れがあります。 天窓を設置する工事は、屋根を葺き替える工事に合わせて行うのがおすすめです。
50年がんばってくれた瓦屋根です。今までありがとう!
瓦を下ろして、下地の骨組みを造ります。
天窓のサイズに合わせて開口部を設けます。
開口部を内側から見ると、天窓の枠が造られています。
天窓を設置し、屋根の下地を造りました。
内側から見ると、窓が隙間なくきちんと設置されています。
防水シートの上にアスファルトシングルを敷きます。
内側にボードとクロスを張り、天窓部分は吹き抜けにして完成です!
お部屋内部の完成の様子です。天窓から光が降りそそぎ、明るさが大幅にアップしました。
天窓は半透明の床の真上に設置したので、天窓からの光が2階を通って1階まで届くようになりました。 どこにいても明るいお住まいへと変身です。
半透明の床を1階から見上げたところです。
都心の住宅密集地では、1階がビルトインガレージになったピロティ形式のお住まいがよく見られますが、耐震性を考えると避けたほうが良い建物です。しかし駐車場を別に確保するのも簡単ではありません。
S様も車を使うためガレージが必要とのことで、ビルトインガレージの耐震補強を行うことになりました。 仕口ダンパーを設置し、新しく梁と柱を追加して補強します。
建物の開口部を減らせば耐震性は上がりますが、ガレージは大きな開口部を設けざるを得ません。 そこで、開口部の補強のため、ガレージ入り口の左右に仕口ダンパーを設置しました。
仕口ダンパーは、柱と梁の交点である仕口に設置する装置で、地震や強風による建物の揺れを軽減する効果があります。 仕口ダンパーを適切に設置すると、開口部が壁と同等の強度になります。
仕口ダンパーは寺社仏閣の補強にも使われる高性能の装置ですが、正しく設置しなければ効果がありません。 仕口ダンパーの採用をお考えの場合は、耐震補強のプロに相談することをおすすめします。
※詳しくは、建物を倒壊から守る耐震補強金物 仕口ダンパーをご覧ください。
様々な仕口ダンパー。
ガレージの中央付近の2箇所に大きな梁をかけて、新しく柱を立てて梁を支えます。 大きな空洞になっていた空間に梁と柱を追加することで、2階部分の重量をこれまで以上にしっかり支えることができます。
新しく梁をかけたため、高い位置にあった棚が使えなくなってしまいました。 その代わりに、ガレージ上部の空間を利用してロフト収納を設置しました。
カー用品や洗車道具など、車まわりの物をあれこれしまえるスペースです。
耐震補強前のガレージ。
作業している箇所が、柱と梁の交点「仕口」です。
仕口ダンパーを左右に1つずつ取り付けました。
剥がした内装をやり直して元に戻します。
新しい柱を立て、梁を設置しました。
耐震金物で、柱と梁をしっかり固定します。
梁の上にロフト収納を造作して完成です。
外から見た感じは変わりませんが、内部はしっかりと補強されて、地震に強い建物になりました。
ガレージの上に設けたロフト収納も便利にお使いいただけます。
建築当時の木製窓をそのままお使いになっていたS様ですが、数年暮らすうちに「冬の寒さを何とかしたい...」と思われたそうです。 木製の窓は、風情はあるものの断熱性が低く、今では一般的なペアガラスの窓サッシとは比べ物になりません。
そこで今回、トステム(現LIXIL)製の断熱雨戸「Dan雨戸」を設置することにしました。 断熱雨戸は、内部に断熱材が入っているため、通常の雨戸より断熱性が高くなっています。
窓が交換できない場合も、雨戸を断熱雨戸に交換すれば、冬でも暖かく過ごすことができます。
1回目のリフォームでは、木製窓をそのまま再利用しました。
断熱雨戸を閉めたところです。これなら寒さが気になりません。
夏は窓を開けると涼しい風が通り抜けますが、同時に虫も入ってきてしまいます。 網戸を設置したいというご要望に応えて、アコーディオンタイプの網戸を設置しました。
アコーディオン網戸なら、木製の窓の雰囲気はそのまま、虫の侵入を防ぐことができます。 使わない時はサッと端に寄せてコンパクトに収納できるので、窓辺がスッキリして見えますね。
アコーディオン網戸を閉めたところです。
上から見るとアコーディオンタイプになっているのがわかります。
S様から最初のリフォームのご依頼をいただいたのが7年前になります。
S様邸は昔ながらの腕の良い大工が建てた建物で、私も先人の技が詰まった建物を後世に残していきたいという思いがあり、リフォーム計画を立てる過程も非常にやりがいを感じました。 S様も建物の良さをご理解くださったからこそ、いいリフォームができたと思います。
今回、再度の工事をご依頼いただき、最初のリフォームでは見送った耐震工事も実現することができました。 これで本当にリフォームが完成した、という気がします。
今後もメンテナンス等でお気軽にお声がけいただければ幸いです。ありがとうございました。
リフォームアドバイザー
塩谷 理枝
最初にリフォーム工事をご依頼いただいてから、早いものですね。もう7年の月日が経ちました。 長くお付き合いをいただき、またこうしてリフォームをご依頼くださって、本当にありがたく思います。
今回は、リフォーム後のお住まいに実際に暮らしてみて、新たに気付いた箇所を、さらに改善していく工事となりました。 これからもお住まいのことは何でもご相談いただければと思います。
いただいたご縁をこれからも大切にしたいと思います。この度はありがとうございました。
インテリアコーディネーター
千葉 容子
私は前回のリフォーム後に入社したので、今回初めてS様邸のリフォームを担当させていただきました。 お忙しい中、ご夫妻と可愛らしい猫ちゃんがいつも温かく迎えてくださって、ありがとうございました。
S様はとてもセンスのある方で、昔ながらの建物を上手に活かして、素敵にお住まいになっています。 今回のリフォームに関わって、私もすごく勉強になりました。
このご縁に感謝します。この度はありがとうございました。
リフォーム後のご感想
S様より
前回リフォームしてもらった家なので、「たぶんこれは塩谷さんでないと、リフォームはおろか、見積もりすらできないのではないか」と思っていました。 それと、家のことを知らない人に、変に手を入れてほしくなかったので、またエコリフォームさんにお願いすることにしました。
耐震リフォームが終わってからは、地震の時に揺れ方がゆるやかというか、建物が揺れをぐっとこらえているような感じになりました。 耐震補強の効果が出ているのではないかと感じています。
S様、再度のご依頼ありがとうございました!
2回目のリフォームを終えて、さらに安心で心地よいお住まいに進化したと思います。
S様ご夫妻と愛猫のこじろう君には、リフォーム工事に快くご協力いただき、ありがとうございました。
第1期工事として行ったリフォームの様子はこちらから。
施工責任者
一級建築士
塩谷 敏雄