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光と風が通り抜ける、
自然派二世帯住宅
目黒区にあるご実家の改修を計画されていたS様ご夫妻。
立地の都合上、建て直しをすると建築面積が狭くなってしまうため、既存の建物を生かしたスケルトンリフォームを選択されました。
ハウスデータ
築年数 | 約50年 |
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床面積 | 1階:36m2 2階:35m2 |
構造 | 木造3階建て住宅 |
内容 | 1~3階のスケルトンリフォーム |
地域 | 東京都目黒区 |
今回のリフォームでのS様のご要望は以下の5つです。
S様邸の敷地周辺は緩やかな傾斜がある場所のため、室内に段差が多いお宅でした。
また、築年数が古く、耐震への不安や断熱不足による隙間風などにもお悩みだったため、
「家族全員が快適に暮らせる二世帯住宅にしたい」
とのご依頼をいただきました。
そして、S様のご要望をもとに、こんなリフォームプランをご提案しました。
素材にこだわった、家族全員に嬉しい住まい
1F暮らしやすく工夫を凝らしたレイアウトに
❶ 収納たっぷりのダイニングキッチン
食器棚などの家具を置かずに済むように、容量たっぷりの収納を設けます。限られたスペースでも余裕をもって使うことができます。
❷ バリアフリーに配慮した寝室
通りから奥まった静かな場所にお母様のお部屋を配置します。お部屋から水まわりの間は段差を作らず、行き来しやすいようにしました。
❸ 生活時間帯を考えた浴室
お母様の就寝時にも入浴の音が気にならないように、お風呂はダイニング側に配置します。
2F吹き抜けと天窓で開放感のある空間に
❹ 階段を緩やかに架け替え
昔ながらの急こう配だった階段は、足腰に負担がかからないよう緩やかに架け替えます。
❺ 空間に広がりを持たせるフリースペース
階段を上った先に広いスペースを設けることで、2階の空間に広がりを持たせることができます。
❻ フレキシブルに使える寝室
広くとった寝室には間仕切りになる引き戸を設け、お子様が帰省した時などは二部屋にしてもお使いいただけます。
●ルーフバルコニーで趣味の園芸を楽しむ
ルーフバルコニーはご主人が大切に育てられてきた鉢植えを並べ、鑑賞できるスペースに。
水やり用の水栓も設置し、防水処理をしっかりと施します。
今回は経年による劣化と、過去に増築した部分で建物のバランスが不安定になっていたため、以下の補強を行いました。
増築部分を撤去し、屋根の葺き替えで重量を軽くしたことで、建物の重心と剛心の位置がほぼ同じになるまで近づきました。
この二つが近くなればなるほど揺れにくいバランスのとれた建物になります。
新たな耐力壁や柱・耐震金具で建物の強度をアップし、地震に強い安心安全な家に生まれ変わったS様邸。
リフォーム前は「評点0.202」
と、大きな地震ではかなり危険な状態でしたが
リフォーム後は「評点1.530」
まで改善!
大きな地震が起きても「倒壊しない」レベルになりました。
※耐震診断では、階ごとにX方向、Y方向の強度が計算され、最も低い評点がその建物全体の評点とされます。
断熱・遮熱をしっかり計画することで、夏涼しく、冬は暖かい快適な空間に。
冷暖房の効率も良くなるので、省エネにも役立ちます。
● 屋根...バウビオ/エコルーフィング
屋根下地と天井の間に、断熱材(バウビオ)と遮熱シート(エコルーフィング)を施工します。
遮熱シートと下地の間を空気・湿気が通り抜けるので、建物内部の結露を防ぎます。
バウビオとは
● 床...フクフォームEco
● 採光計画
日当たりの悪いダイニングには、天窓からの光を取り込みます。
天窓の下になる床を光を通す素材にし、1階ダイニングまで明るい光が届くようにしました。
● 通風計画
窓からの自然の風で家じゅう換気ができるように風の通り道を作りました。
夏場、室内の暖まった空気は天窓から外に逃げ、各部屋の窓からさわやかな風が通ります。
コーディネーター 千葉より
S様邸でのプランニングは、これだ!と思えるご提案にたどり着くまで、社内で何度もプランを練り直しました。
S様の建物は、高低差がある土地に建っている為、1階を完全なバリアフリーにすることができず、どこで段差を解消すればお母様が安心して快適に暮らして頂けるかを考えました。
各部屋の配置については、S様ご夫婦とお母様のご生活のリズムが異なるので、お母様が静かにお休み頂けるような間取りになっています。
また、近隣が近接していますが、その中でもできる限り自然光を取り入れ、自然の光と風で快適に暮らして頂けるよう工夫しました。
作り付けの収納家具は、お持ちのお荷物やその場所に置く家具に合わせてご提案しています。
より良い間取りをご提案するには、お客様とのお打合せがとても大切です。
S様には何度もお打合せのお時間を頂き、今後どのように暮らされたいのかなどを沢山伺いました。
S様、お忙しい中ご協力頂きありがとうございました。
プランが決定し、いよいよ工事がスタートします。工事中にはテレビの取材も入りました!取材の様子もご紹介します。
工事前に行っているお清めの様子です。
まずは室内の解体を行います。
柱などの構造体に傷をつけないよう、一つ一つ丁寧に解体していきます。
基礎の補強を行う前に、土の部分に砕石を敷き、その上に鉄筋を配置していきます。
配筋が完了したら、その上からコンクリートを流し込みます。
このコンクリートが乾けば、基礎補強は完了です。
構造体に関わる部分は、仮の柱で支えながら解体していきます。
ベテランの職人が長年培った技術で慎重に作業を進めます。
基礎のコンクリートが固まったら、その上から新しい土台を据えて固定します。
交換できる柱は交換し、さらに柱を追加して補強していきます。
傷んだ土台を交換
土台の木材に傷んでいる部分が見つかりました。
こちらは構造上重要な柱の土台なので、防虫加工された新しい木材に交換し、ボルトで固定しました。
S様邸現場がニュースで放送されました
建築士の塩谷が木造住宅の耐震についてテレビ取材を受け、ちょうど工事中だったS様邸を耐震補強リフォームの例として撮影させていただきました。
工事中の現場で建築士の塩谷が既存木造住宅の補強方法について解説。フジテレビの夕方のニュースにて放送されました。
突然の取材依頼にも快諾くださったS様、誠にありがとうございました。
取材時、現場で耐震方法について解説している塩谷敏雄です。
今回S様邸で使った柱は、国産(紀州)の杉材。
写真のように既存の柱・梁と新しい木材を組み合わせ、耐震金物を取り付けます。
ダイニングになる場所に床下収納庫を造りました。
この上から下地を組み、床を張っていきます。
床下収納庫、沢山入りそうでいいですね!
現場の様子から床下収納が出来そうだとご提案頂き、思いがけないプレゼントになりました!ありがとうございます!
防蟻処理の様子を動画でご紹介(1)
防蟻処理の様子を動画でご紹介(2)
木材にシロアリ予防の防蟻剤を散布しました。薬剤には人体に害のないホウ酸を使用しています。
断熱材「フクフォームeco」を床の下地の隙間に合わせてカットし、敷き詰めていきます。
壁・天井には断熱材の「パーフェクトバリア」を入れ、その上から構造用合板を張ります。
天候のタイミングを見計らい、屋根工事を行います。
まずは吹き抜けの天井となる杉のパネルを施工し、天窓の穴を開けます。
次は断熱材です。ここには調湿性能のある断熱材「バウビオ」を使います。
断熱材の上に下地の板を張り、その上から遮熱シートを貼っていきます。
吹き抜けの天井パネルは杉の木目がとても綺麗ですね。木の暖かさがある家って本当に素敵です。
断熱や遮熱もしっかりと工事してくださったので、日差しが強い夏でも快適に過ごせそうです!
バルコニーの防水処理をしています。
S様邸では防水効果の高い鉄板を使用した防水工法を採用します。
外壁の下地を塗っています。お隣の壁との間で狭い場所ですが、慎重に作業を進めます。
屋根の下地に防水シートが張られ、その上から仕上げ材のアスファルトシングルを施工します。
外部と並行して内装も進めていきます。
階段は杉の板を現場で職人さんがカットし、一段ずつ調整しながら造っています。
無垢フローリングは季節ごとに微妙に伸び縮みするため、板と板の間に紙を挟んで細かく調整をします。
オリジナルのダイニング収納を製作しています。
はじめは壁一面の収納をご提案いただきましたが、ダイニングテーブルを広く使いたいので、間にテーブルが入るよう中央を削ってもらいました。
お店に売っている家具ではこうはいかないので、造ってもらえて良かったです。
工事中はS様にも何度か現場へ出向いていただき、打ち合わせを行いました。
機器の取り付け位置や玄関タイルの色など、実際に目で見て確認していただきます。
こちらは床下収納の蓋を加工しているところ。
複雑な細工も丁寧に作りこまれています。
建具は国産の杉を使用したオーダーメイドのものです。
現場でぴったりと納まるように、職人さんが細かく調整をします。
仕上げにクロスが張られました。すべての工事が完了したらクリーニングを行い、いよいよ完成です。
一級建築士 塩谷より
S様邸の工事は、今まで私が行ってきたリフォームの中でも、5本の指に入るほど難易度の高い工事でした。 構造を根本から見直し、新築を超えるリフォームになったと思います。
断熱に加えて遮熱計画にもこだわり、耐震プランにおいても最新の技術を取り入れました。 それが、工事中に2回もテレビの取材を受けたことにつながったのでしょう。
いくら計画が良くても、それを造る職人さんたちの協力無くしては、リフォームは完成しません。 信頼のおける大工さんや昔からの協力業者の皆さんのお陰で、ようやく形となりました。
いろいろな思いがたくさん詰まったS様邸です。何よりお客様にご協力いただけたことに感謝します。
約3ヶ月の工事を経て完成した目黒区の二世帯住宅。
築50年の家にしっかりと耐震補強を施し、災害に強い安心・安全なお宅になりました。
上質な自然素材をふんだんに使用して新築同様に生まれ変わった完成の様子をご紹介します。
敷地の都合上どうしてもできてしまう玄関の段差は、以前よりも段数を増やして少しずつ上がるようにしました。
手すりをつけ、段差も一般的な階段と同じ高さになったので、お母様の足腰の負担を軽減します。
また、玄関ドアは使いやすい引き戸タイプなので、軽い力で開けることができます。
玄関収納は、ご家族の靴をたっぷりとしまえるよう、天井までの高さのものを造作しました。
お母様のシルバーカー置き場の上には飾り棚と収納を造り、デッドスペースを有効活用しています。
ご家族が集うダイニングキッチンには、壁一面にオリジナルの収納棚を造りました。
カバ桜の無垢フローリングと木製の建具で木のぬくもりを感じる安らぎの空間です。
BEFORE
キッチンはタカラスタンダードのシステムキッチン「レミュー」。
ホーロー製で汚れに強く、お手入れが楽にできます。
ダイニングの壁一面がキッチンとなるため、
キッチンパネルはインテリアになじむローズウッド柄のホワイトカラーに。
壁紙の白や無垢の床にもマッチして上品な印象になりました。
物が溢れがちなキッチンまわりも、使いやすい収納でスッキリと片付きます。
ダイニングテーブルの下には床下収納を設けました。既製品にはない大きなサイズで、便利にお使いいただけます。
ダイニングの収納棚は、食器や小物などをたっぷりとしまうことができます。
通りから離れた静かな場所にお母様のお部屋を配置しました。
ご家族間で生活時間帯が違っても、キッチンやお風呂の生活音を気にすることなく、落ち着いてお休みになれます。
床にはコルクタイルを採用しました。コルクタイルはクッション性があり足腰に負担がかからないので、ご高齢の方には特におすすめです。
BEFORE
BEFORE
浴室はタカラスタンダードのシステムバスを採用しました。
ホーローの浴槽は保温性が高く、時間が経ってもお湯が冷めにくくなっています。
以前は冬寒く、居室との気温差によるヒートショックが心配でしたが、
しっかりと断熱材を施工し、冬でも暖かく保てます。
トイレ・洗面はお母様の寝室からスムーズな動線で移動することができます。
床に使用しているコルクタイルは水に強い素材の上、保温性があり冬でもヒヤッとしないため、水まわりの床にも最適です。
急勾配だった階段は緩やかに架け替えました。
手すりも新しくし、やわらかくナチュラルな雰囲気になりました。
BEFORE
階段下スペースは洗濯機置き場に。デッドスペースを作らず有効活用する工夫を凝らしています。
上り口脇の高さが取れない場所は収納にしています。
階段を上った先は、ミニキッチン、トイレと、ご主人様の蔵書を収める本棚を設けたフリースペース。
一見無駄なように見える空間ですが、このスペースがあることで2階全体が広がりのある空間になります。
通路を塞がない扉
トイレの扉は開閉が邪魔にならないようにスライディング式のドアを採用しました。
扉が内側へスライドしながら開くので、通路を塞ぐことなく開閉できる優れものです。
こちらの階段の角は、斜めになった立ち上がり部分に板の端を見せない留加工という技術が使われています。
この部分をぴったりと綺麗に収めるには経験と勘が重要で、まさに大工の腕の見せ所!以前は窓の外にお隣の壁があり、あまり光が入らない部屋でしたが、壁が接していない西側に掃き出しの窓を設け、外からの光を取り込めるようにしました。
S様邸では、それぞれのお部屋ごとに掃き出し窓を設け、各部屋でさっと布団が干せるようになっています。
BEFORE
屋上の熱を遮る遮熱シート
こちらのお部屋は屋上の真下に位置するため、天井に遮熱シートを施工しました。
このシートがあることで屋上に当たる日差しの熱を部屋には伝えず、夏も涼しく過ごすことができます。
吹き抜けになった天井が開放的なお部屋です。
限られたスペースも吹き抜けで空間に高さをもたせると、想像以上の広がりを感じることができます。
BEFORE
吹き抜けの天井には「Jパネル」を張っています。
Jパネルは国産杉の間伐材で作られた強度の高い集成材。
天然の木ならではの美しい木目が白い壁によく映えて、時間がたつほどに味わいが出てくる素材です。
「火打ち金物」をあらわしに
火打ち金物とは、建物の角に設置する耐震金物のこと。
通常は梁と一緒に天井の中に隠れてしまうものですが、S様邸では2階の梁と一緒にこの火打ち金物もあらわしにし、開放感のある吹き抜けにしました。
普段は引き戸を開け放して広いお部屋としてお使いになり、お子様が帰ってこられた時には戸を閉じて二部屋にすることができます。
4畳ほどのスペースですが、天井が高いので圧迫感を感じません。
天窓からは光が降り注ぎ、とても明るい空間です。
天窓からの光を通す「ひかり床」
こちらの半透明になっている床は「ひかり床」。
天窓からの光は、ここを通って1階のダイニングまで届きます。
天窓から差し込む光の量は通常の窓の2倍以上。
この「ひかり床」からの光で、1階にも明るい自然光を取り入れることができます。
ルーフバルコニーは、趣味の園芸を楽しむスペースに。
水やり用の水栓も設置し、水漏れしないよう特殊な防水工事を行いました。
日当たりのいいバルコニーはご主人様の一番のお気に入りの場所です。
広い階段室は悪天候時に鉢植えを避難させることができます。
金属防水「スカイプロムナード」
バルコニーでは鉢植えの水やりをするため、屋上庭園にも使われる防水工法を採用しました。
塗装による防水に比べて耐久性に優れているほか、軽量化されたステンレス・鋼板で重量の負担が少なく、木造住宅におすすめの工法です。
コーディネーター 千葉より
工事中は何度もお打合せのお時間を頂きありがとうございました。
今回のS様邸のように間取りを大きく変えるリフォームでは決めて頂くことが沢山ありましたので、ご負担も大きかったかと思います。いつもこころよくご協力頂きありがとうございました。
趣味を沢山お持ちのS様。植物のお話しもお聞かせ下さり、お打合せはいつもとても楽しい時間でした。
室内には無垢のフローリングや建具など、自然素材を沢山使用しましたので、時間の経過と共に木の色が深くなり、時が経つほど味わいのある素敵な空間になっていくことと思います。
その自然素材の変化も一緒に楽しんで、これからのS様ご家族がより安心して快適にお暮らしいただけるよう願っております。
数年たって木の色があめ色に変化し始めた様子をまた見せて頂けると嬉しいです。
S様この度は、私共にご用命頂きありがとうございました。
今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
一級建築士 塩谷より
この工事ではこだわった箇所がたくさんあります。 その一つが「杉」という材木です。和歌山の山長商店さんの紀州材をふんだんに用いて、本当に美しい架構が出来上がりました。
また、屋根の小屋組みは手刻みで造りました。下小屋(材料の加工場)で何日もかけて大工たちと一緒に造りあげたものです。 普通の住宅では考えられないくらい、手間のかかった素晴らしい屋根となりました。
そんな苦労はありましたが、お客様の良き理解と職人たちのプロならではの仕事が無くては出来なかった工事です。
時間とともに味わいの出る本物の素材と、私たちが持っている技術と知識をすべてつぎ込んだ住宅となりました。 この家で、これからもどうぞ健やかにお暮らしください。
この度は本当に良い仕事をさせていただきました。ありがとうございました。
住宅密集地にあるS様邸ですが、しっかりと採光・通風計画を練り、室内には上質な自然素材を使用して、気持ちよく快適に過ごせる住まいが完成しました。
園芸がご趣味で、たくさんの鉢植えを大切に育てられているS様。
自宅で多肉植物栽培にはまっている担当コーディネーター千葉に育て方のアドバイスをくださったり、珍しい品種を譲っていただいたりと、リフォームのこと以外にもお気遣いいただき、大変お世話になりました。
リフォーム後のお宅では鉢植えを置けるスペースも設け、ますます充実した毎日を過ごされることと思います。
S様、この度はリフォームのご依頼、誠にありがとうございました。