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減築で暮らしやすい家に 築60年のリフォーム

減築で暮らしやすい家に
築60年のリフォーム

生まれ育ったご実家をご両親から受け継ぎ、家族5人の住まいにするご計画されたM様。思い入れのある家にしっかりと手入れし、この先も長く安心して住めるようにしたいというご依頼です。

建物は築60年の母屋と47年前に建て増しした増築部分がありましたが、母屋だけで十分な広さがあったため、増築部分は解体して駐車スペースにしました。

減築と耐震工事で建物の寿命を延ばし、ご家族が安心して暮らせるようになったスケルトンリフォームの事例です。

ハウスデータ

東京都江東区 M様邸

築年数約60年
構造木造2階建て住宅
建坪25坪から17坪に減築
内容フルスケルトンリフォーム

リフォーム Before-Afterダイジェスト

こちらの事例のBefore Afterを動画でまとめました。リフォーム前とリフォーム後の様子をダイジェストでご覧ください。

これまでのリフォーム事例を動画でお送りするエコリフォームYouTubeチャンネルはこちらから!

東京都江東区は南部に近代的な建物が建つ湾岸エリアが広がり、古くから下町として栄えてきた深川・城東エリアには今も昔ながらの戸建ての家が多く残っています。

M様邸がある深川エリアは、江戸っ子の粋と人情が息づいている情緒あふれる街ですが、近年はおしゃれなカフェなども多く出店し、古いものと新しいものが融合する独特な魅力で注目を集めています。

東京都江東区のリフォーム事例一覧

リフォームプランの作成

M様のご要望

減築して暮らしやすくしたい

耐震補強で安心して住める家にしたい

将来を考えてバリアフリーにしたい

キッチンは広々と使いたい

材木屋さんだったおじい様が建てたお宅は築60年。既存の建物の半分は47年前に増築された部分です。
建築当初はM様のご両親の他にもおじい様おばあ様やお母様のご兄弟などもひとつ屋根の下に暮らす大家族でした。

時が経ち、M様も独立されて近年は大きな家にご両親だけでお住まいだったとのこと。今回、M様がこちらのお宅を引き継ぐにあたり、長年使われていなかった増築部分は解体し、母屋の方を家族5人の居住スペースとしてリフォームすることにしました。

ご提案プラン

1F

【 Before 】

【 After 】

減築

母屋だけを残し、増築部分は解体します。建築時のシンプルな形に戻すことで、建物のバランスが良くなり耐震性も向上します。

キッチンの移動

建物の奥にあったキッチンは、前面道路側に移動。キッチンがあった場所にはご夫妻の寝室を設けました。落ち着いた静かな場所でゆっくりとお休みになれます。

2F

【 Before 】

【 After 】

和室から洋室に

二間続きの和室は間を区切って洋室にし、廊下で各部屋に出入りできるようにしました。

トイレの増設

以前は1階にしかなかったトイレを2階にも増設します。

※プランはプレゼンテーション作成時のもののため、実際の間取りとは異なる部分があります。

耐震補強計画

耐震診断

既存の建物の状態を調べて構造評点を計算したところ、1,2階ともに「倒壊する可能性が高い」という判定結果が出ました。建物全体のバランスを見ながら補強計画を行い、リフォーム後は全方向で耐震評点が1.0を超えるようにします。

耐震工事前

耐震工事後

柱・耐力壁の追加

新たな間取りに合わせて柱を追加し、1階の一部の壁は建物を面で支えるための耐力壁にします。建物の重さの中心である重心と、強さの中心となる剛心の場所が近くなるようにして、地震がきても揺れにくい建物にします。

基礎の補強

既存の基礎は地面が土のままの布基礎で、地面の上には建築当時のガラがそのまま残されていました。このガラを撤去し、土の地面をコンクリート敷にすることで建物の強度を向上させます。

屋根の葺き替え

瓦屋根を葺き替えて、屋根の重量を軽くします。一般的な瓦の1/3の重さで施工できるアスファルトシングルを使い、大きな揺れが起こった際に建物にかかる負担を軽減させます。

<建築士塩谷より>

減築で耐震性能が大幅にアップしました

一級建築士

塩谷 敏雄

M様のお宅は、母屋だけを残し、増築部分を解体することで建築当初の長方形の間取りに戻りました。増築部分の解体というのは耐震の面でも有効に働く場合が多く、デコボコのないシンプルな形にするのが一番揺れにくい家になるといわれています。

基礎は鉄筋の入っていない布基礎だったため、埋め込みアンカーを使い、耐圧盤となるベタ基礎へと補強します。その上に建つ構造体は、あまり耐力を上げすぎると基礎の耐力に釣り合わなくなってしまうため、全体のバランスを見て耐震計画を行いました。

工事中の様子

解体の様子

増築部分は母屋に響かないように手作業で解体して更地にしました。
母屋の方は内装を全て解体して、骨組みだけの状態になりました。

基礎の補強

基礎の中にあったガラを取り除いて鉄筋を組んでいきます。コンクリートを流して平らにならし、基礎の強度を上げます。

構造体の補強

古い柱で交換できるものはすべて交換し、追加の柱と耐力壁で耐震補強します。また、建物に若干の傾きがあったため、既存の柱を少しずらして傾きを修正しました。木材には山長商店の紀州杉を使用しています。

傾きの修正

建物に少し傾きがあったため、柱交換と同時に傾きを修正しました。階段の柱は構造上抜けない柱だったため、根元を切って位置を少しずらし、新しい木材を添わせて補強しました。

柱交換の様子

職人の柱交換の様子を動画に収めました。仮の柱で建物を支え、古い柱を抜いてから新しい柱を取り付けます。

外壁・屋根工事

増築部分に隣接していた壁と、道路側の外壁は新しく作り直しました。既存の外壁はクラックを補修してから塗装します。

屋根は瓦をすべて下ろし、新しい下地を張ってアスファルトシングルで葺き替えました。

内装工事

室内の造り付け収納の製作や設備の取付などを行い、クロスを張りました。

玄関框施工の様子

玄関の框を施工している様子を動画に収めました。隙間なくぴったり収めるのに、職人の小技が効いています。

工事の様子はブログでもご紹介しています

エコリフォームでは、進行中の工事の様子を随時ブログでレポートしています。M様邸の現場が進んでいた当時の記事はこちらからご覧ください。

M様邸現場レポート

リフォーム完成!

外観・エントランス

写真手前にあった増築部分を解体して更地にし、駐車スペースとしました。屋根は瓦を下ろして葺き替え、駐車スペースと道路側の外壁は新しく作り直したため、まるで新築したかのようです。

ドアやポスト、目隠し板はブラウンで統一し、スタイリッシュで落ち着いたエントランスになりました。

大容量の玄関収納を取り付けて、スッキリと片付く玄関です。高さのあった上がり框は階段状に段差を付けて、出入りしやすくなりました。

1F

リビング

玄関から入ってすぐの和室はフローリング張りのリビングダイニングになりました。無垢材を使用した建具は引き戸タイプにして、バリアフリーに対応しています。

以前キッチンだった場所は、寝室に変更しました。浴室はキッチンから出入りしていましたが、耐震補強の関係で位置を少しずらしたため、リビング側から出入りできるようになっています。

階段下の収納はリフォーム後も残しました。

向かって左側は玄関に続く扉です。玄関脇にあった洋室はキッチンになりました。

キッチン

キッチンはタカラスタンダードのホーローキッチンを取り付けました。 リビングダイニングから独立させた場所に設けて、お持ちの食器棚などを置いても作業スペースを圧迫しない広さを確保しています。

ホーローのキッチンパネルは汚れに強くお手入れが簡単。磁石が付くので、壁面にフックなどを取り付けて便利にお使いいただけます。

寝室

リフォーム前にキッチンがあった場所は、ご夫妻の寝室になりました。将来、足腰が弱ったときのためにご夫妻は1階だけで生活できるような間取りにしています。

浴室

お風呂は以前に水まわりをリフォームした際の影響で耐震強度が弱くなっていたため、耐力壁を追加し、しっかりと補強しました。

階段

階段は新しくラバーウッドの集成材で製作しました。

2F

2階はお子様のお部屋になります。3つの洋室はお子様それぞれの好みに合わせた内装にしました。

洋室1

内装をきれいに整えて、すっかり印象が変わりました。ドア側のブルーのアクセントクロスが爽やかです。

洋室2

中央にあった和室は、白い壁紙と、濃い色のフローリングのコントラストがカッコいいお部屋になりました。

洋室3

床の間をクローゼットに、押し入れだった場所にはオープンな棚を造り付けました。高さが自由に変えられる便利な収納です。

リフォームを終えて

塩谷 理枝

リフォームアドバイザー

こうして完成したM様邸を振り返ると、初めてお話をいただきお宅を拝見に伺った時のことを思い出します。
大家族でお暮らしだった家は、沢山の部屋があり大きく広い建物でした。M様ご自身も生まれ育った思い出がおありの建物です。
お話しぶりからもこの建物を大切に思われていることが伝わってまいりました。

ただ、室内にはご両親がお暮らしだったころのお荷物がたくさん残されていて、まずは、その片付けからこのご計画は始まりました。
毎週末、お荷物の片づけにリフォーム工事のお打ち合わせにと、M様は大変なご負担だったことと思います。

工事がスタートしてからも、耐震に関してや素材のことなど、こちらの提案内容を十分にご理解いただけたことは、本当にありがたいことでした。
おかげさまで工事を大変スムーズに進めることが出来ました。
設計から工事中といつもご協力とお心遣いをいただき、ありがとうございました。

今回のリフォームは、お爺様が残された建物をこれからも長く快適にお住まいいただけるよう、建物の根本から見直す工事となりました。
この家でご家族が安心、快適にお暮らしいただけましたら何より嬉しく思います。


塩谷 敏雄

一級建築士
耐震設計士

M様のお宅は、私と同じ江東区ですが、この辺でも多くの材木屋さんがあった地域です。
お祖父様が、材木商を営んでいらしたため、建物の諸所にこだわりの材木が使用されておりました。
ただ、やはり経年には勝てず、こだわりの階段も交換と相成りました。

あらかじめ予定していた補強の他に、解体して構造を見てから追加した補強点もありましたが、変更にも快く対応していただきありがとうございました。
こちらが伺うことにもすぐにお答えいただけたため、現場をとてもスムーズに進めることができました。
また、ご近所の方にも音やほこりでご迷惑をおかけしたと思います。住宅密集地の中でも皆さまご理解くださり、とても良くしてくださいました。

完成したお宅で、またご家族が仲良く一緒に暮らされることをうれしく思います。
リフォーム中は現場のことにも色々とご配慮いただき、本当に感謝いたします。ありがとうございました。