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シェルターを造る耐震補強リフォーム
T様邸 ハウスデータ
築年数 | 64年以上 |
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構造 | 木造2階建て住宅 |
内容 | 耐震補強・内装リフォーム、断熱施工 |
地域 | 東京都文京区 |
築60年の家。もうしばらく頑張ってもらうために。
T様は、築60年以上になる木造住宅をリフォームして、5年ほど仮住まいとして暮らしたいとご希望でした。 必要な箇所のみリフォームして、自分たちでできるところはDIYでされたいとのこと。
ご要望に合わせ、セルフビルドが難しい耐震補強工事や大工工事、電気工事を中心としたリフォームを計画しました。 耐震補強工事では、一部屋をシェルターのように補強します。大きな地震が来ても「ここにいれば大丈夫」と言えるお部屋が完成しました。
T様は素敵な若いご夫婦です。文京区の木造住宅をリフォームして移り住みたいとご相談いただきました。 リフォームするのはお父様ご所有のレトロな趣のお住まいで、築年数は60年以上になります。
ずっと長く暮らすわけではないので、あまり費用をかけず、命を守るための耐震補強をしっかり行います。 T様ご夫妻が安心して暮らせる空間にするため、ご予算の中でできる最善の方法を考え、ご提案しました。
築60年の木造の家のため、耐震性にはかなり不安があります。 T様ご夫妻にとって最適な補強方法として、シェルターになるお部屋をご提案しました。
畳の床は無垢フローリングに変え、傾きも解消して水平にします。 傷みの激しい天井も張り替え、DIYでは難しい箇所をリフォームします。
昔ながらの碍子(がいし)を使った電気配線から、新しいものに交換します。 また、床と天井に断熱材を入れ、暮らしやすい空間にします。
T様邸は昭和22年築。戦後間もない頃だったため、あまり良い材料は使われていませんでした。 さらに経年の傷みとシロアリ被害が加わり、耐震性はかなり低い状態です。
ここから、耐震性能を表す評点の1.0「一応倒壊しない」レベルにするには、大規模な工事が必要で費用もかかります。 しかしT様は、5年ほどしか住まない予定のため、それほど費用をかけられないというご事情がありました。
そこで、家全体を耐震補強するのではなく、一部屋だけを重点的に耐震補強して、シェルターとして使う計画を立てました。 T様ご夫妻が長い時間を過ごす1階の8畳の居間をしっかり耐震補強して、「ここにいれば大丈夫」というシェルターのようなお部屋にします。
現地調査の様子。
このお部屋をシェルターにします。
シェルターにするお部屋に、新しい土台と柱、梁を設けて組み合わせます。 さらに地震に耐える力を持つ耐力壁でも補強します。
今回、内部のみの耐震補強を行うため、柱を交換することができません。 古い柱はそのまま残して、新しい柱を添わせ、梁と土台で接続する方法を取ります。
こうして新しい土台と柱、梁でしっかり補強された空間を造り出します。 言わば、お部屋の中にもう一つ、頑丈なお部屋を造ったような形です。
T様邸は2階建てですが、今回シェルターにするのは、2階部分が乗っていないお部屋です。 上に2階部分が乗っているお部屋では、万が一の時に倒壊する可能性が高くなるため、また違った補強方法を取る必要があります。 どんな建物でもシェルターを造る耐震補強ができるわけではありません。
建物の形状や現在の状態によって、様々な耐震補強方法が考えられます。 エコリフォームの一級建築士・塩谷敏雄は、木造住宅の耐震補強について豊富な経験を持つことから、T様邸にベストな方法を選択することができました。 木造住宅の耐震補強をお考えの方は、木造住宅の構造に詳しい建築士に相談した上で、どういう形の耐震補強が良いか検討することをおすすめします。
経年した建物の解体工事は、いつも以上に細心の注意が必要です。 慎重に解体を行わないと、建物が倒壊する恐れがあります。
一級建築士・塩谷が確認しながら、職人に指示を出して解体していきます。
解体後はT様にお越しいただき、現状の報告と耐震補強方法の説明を行いました。
既存の柱の前に、新しい柱を立てました。白く見える方が新しい柱です。
柱を受ける土台や、柱の下に置く沓石(くついし)も新しくします。
梁も新しくします。柱の上に梁をかけ、しっかり結合しました。
柱と梁の接合部分も耐震金物で固定します。地震で柱が抜けてしまうことを防ぎます。
部屋の角には火打ち金物を設置して補強します。
T様邸は経年により、建物の南側と北側で、床の高さに差が出ていました。 今回のリフォームで床を張り替えるのに合わせて、高さもフラットにします。
床の下地から造り直して、床の傾きを水平に戻します。
床の高い方に合わせたので、収納が少し小さくなります。 T様に現場をご確認いただき、詳しくご説明しました。
昔のお住まいのため、床には断熱材が入っていませんでした。 床下に断熱材を入れ、足元から冷気が上がってくるのを防ぎます。
無垢フローリングを張って仕上げます。 天然の木材の風合いが、昔ながらの木造住宅にピッタリです。
戦後すぐの建物のため、天井の木材も不足していたようです。 下地から張り直すことになりました。
天井にもしっかり断熱材を入れ、暑い時期も寒い時期も過ごしやすくなります。 電気配線も新しく引き直しました。
和の空間と調和するように、90cm角のラワン材を張ります。 数ミリの隙間を開けて張る「目透かし張り」で仕上げました。
レトロな雰囲気はそのまま、住宅を再生することができました。 万が一大きな地震が来ても、しっかり耐震補強をして、シェルターになるお部屋を造ってあるので安心です。
昔の家は、断熱性が低かったり、電気配線が古いままだったりして、現代の暮らしに合わない部分が少なくありません。 T様邸は設備を見直して、ずっと暮らしやすくなりました。
完成を記念して、T様と記念撮影! これからDIYで素敵なお部屋に仕上げるそうです。リフォームのご依頼、ありがとうございました。
Before
リフォーム後のご感想
T様より
実家の敷地内に建つ、築60年超えの小さな空き家。遠くない将来に二世帯同居するまで、この家を私たち夫婦の仮住まいにできないかと考えました。かなり古いけれど少し手を入れれば...と安易に考えていましたが、実際にはそう簡単にはいきませんでした。最低でも、シロアリ被害と傾斜した床はクリアしないと住めない状態で、大規模なリフォームが必要なのは一目瞭然でしたが、仮住まいにあまり大きな予算はかけられません。
いくつかの業者にリフォームの見積もりをお願いしてみましたが、メールで連絡した段階で難色を示されました。あきらめかけていた時に、「一度見せていただけませんか?」とお声をかけてくださったのがエコリフォームさんです。希望の予算内で、できる限り安全で快適な家にするために、親身になってご提案してくれました。「内装はできるだけ自分たちで」という希望を尊重して、DIYのアドバイスをくださったことも有り難かったです。
解体後、床の傾斜の原因が地盤だったことがわかって愕然としましたが、それでも「なんとかします」と力強いお言葉をいただいて、どれほど安堵したことかわかりません。
おかげさまで、古い家でも快適に生活することができそうです。エコリフォームの皆様には、本当にお世話になりました。今後とも頼りにしていますので、よろしくお願いいたします。
施工責任者
一級建築士
塩谷 敏雄
耐震補強前には、室内の柱を少し揺らすだけで、ガタガタと音を立てて建物全体が揺れる状態でした。 土台や柱、梁を新しいものにして、しっかり補強したので、工事後は柱を揺すっても揺れなくなりました。
シェルターになる部屋にいればより安心です。大きな地震の際も倒壊することなく、外に逃げる時間の余裕ができると思います。
実は、耐震補強工事が完了した数日後に、東日本大震災が発生しました。 東京でも大きな揺れを感じましたが、建物は揺れに耐え、翌日無事にお引渡しすることができました。 3月11日に耐震補強を終えていて、本当に良かったと思います。
リフォームアドバイザー
塩谷 理枝