TOP > リフォーム事例 > 部分リフォーム > 築50年の木造住宅を耐震補強リフォーム
築50年の木造住宅を耐震補強リフォーム
F様邸 ハウスデータ
築年数 | 50年以上 |
---|---|
構造 | 木造3階建て住宅 |
内容 | 耐震補強・内装リフォーム |
地域 | 東京都文京区 |
築50年のお住まい。命を守るための耐震補強リフォーム。
1階の半分ほどを倉庫として使われているF様邸。耐震性に不安を感じ、耐震診断を受けたところ「倒壊する可能性が高い」という結果でした。
倉庫は開口部が大きく壁が少ないため、1階部分に重点を置いた耐震補強工事をご提案しました。 1階部分を耐震補強することで、上階の荷重をしっかり支え、避難経路も確保できる、地震に強い建物に生まれ変わります。
F様はホームページから耐震補強をしたいとお問い合わせくださいました。
建物に手を入れながら大切にお住まいになっているので、外観はそれほど古く見えませんが、地震や強風で揺れることもあり、建物の耐震性能に不安を感じていらっしゃったそうです。
そこで、文京区の無料簡易耐震診断を受けたところ、評点 0.41と、心配な数値が出てしまいました。 評点 0.7未満は「倒壊する可能性が高い」とされる数値です。
何とかしなくてはと思われた矢先に東日本大震災が発生し、F様も大きな揺れを経験され、今回、本腰を入れて耐震改修をすることになりました。
こうした点を解消するために、耐震補強プランを作成していきます。
エコリフォームの一級建築士・塩谷敏雄が実際にF様邸を拝見したところ、大きく2つの問題が明らかになりました。
倉庫部分の外壁が少ない
1階の倉庫部分は開口部が大きく、外壁が少ない状態です。
倉庫内部を仕切る壁も少ない
倉庫は壁の無い広い空間で、仕切り壁が少ない点も心配です。
↓
文京区の耐震診断結果も踏まえて、
「1階に重点を置いた耐震補強」をご提案しました。
解体を行うと、予想よりも内部が傷んでいたり、想定した構造と違っていたりすることがあります。 築年数が長い建物はなおさらです。F様邸でも、解体後に下記の点が判明しました。
初期の耐震補強計画に、解体後に判明した点を加えることで、より良い耐震補強計画となりました。
スケルトンリフォームで建物全体を耐震補強すれば、耐震性能を大幅に上げることができますが、費用も工期もかかります。 今回はF様のご要望に合わせて、建物の1階部分のみを耐震補強する計画としました。 1階部分を重点的に耐震補強することのメリットとして、以下が挙げられます。
上階の荷重を支えられる
建物の1階部分は、上階からの荷重を支えている重要な部分です。 1階部分を補強することで、建物が倒壊することを防ぎます。
避難経路が確保できる
建物内から外へ避難する時に、1階部分は大事な避難経路となります。 いざという時に命を守るため、避難経路を確保することも優先度の高い項目です。
住みながら工事できる
建物全体を耐震補強する場合は長期の仮住まいが必要になりますが、部分的な耐震補強なら住みながらでも工事が可能です。 F様邸も住みながらの耐震補強工事が10日ほどで完了しました。
施工責任者
一級建築士
塩谷 敏雄
耐震補強の専門のソフトウェアに計画を入力すると、どのくらい耐震性能が上がったかを数値で確認することができます。
耐震補強工事後、1階部分の上部構造評点が、0.41から0.96まで改善されます。ほぼ、評点 1.0の「一応倒壊しない」レベルです。
耐震補強工事を行うのは1階部分のみのため、2階と3階の数値は変わりませんが、建物が倒壊する危険性はずっと低くなる計算です。 今までよりも安心してお暮らしいただけます。
筋交いと耐震金物、構造用合板を使い、地震に強い耐力壁にしていきます。 ここでは、倉庫と居住部分を隔てる壁の工事の様子をご紹介します。
倉庫と居住部分を隔てる壁には、柱が入っているだろうと予測していましたが、実際に解体してみると柱はありませんでした。 この部分の天井には鉄骨の梁が入っているため、重い梁を支えられる構造に補強します。
Before
壁を解体したところ、柱がありませんでした。
新しい柱を4本設置します。
柱の間に、X字に筋交いを入れました。
地震の縦揺れで柱や筋交いが抜けないよう、耐震金物で固定します。
耐震補強とは関係ありませんが、断熱材を施工して快適なお部屋にします。
地震に耐える力を持つ構造用合板で壁をふさぎ、ボードを張ります。
倉庫側の壁は白く塗装して仕上げました。
窓やドアになっている開口部は、壁と比較して弱いため、建物が倒壊する時には、開口部の多い面から倒れます。 しかし、開口部は災害時の大切な避難経路です。開口部が倒壊してしまうと、室内から避難ができなくなってしまいます。
そこで開口部には、制震効果がある金物、仕口ダンパーを設置することにしました。 仕口ダンパーは柱と梁などの接合部に設置するため、壁や天井を一部壊してから取り付けることになります。
壁の一部を壊し、2箇所に仕口ダンパーを設置しました。
柱と梁の接合部に仕口ダンパーを設置します。
仕口ダンパーを設置中の職人さんです。
仕口(しくち)は柱と梁の交点を指す建築用語です。 仕口は木造軸組工法の住宅の耐震性を左右する重要な箇所ですが、通常の耐震金物でガチガチに固めてしまうと、地震の際に柱や梁を傷めることになります。
その点、仕口ダンパーなら、地震による揺れのエネルギーをしなやかに吸収することができます。 地震の揺れを抑制する「制震」の装置です。
仕口ダンパーは、2枚の鋼板の間に、エネルギーを吸収する粘弾性体を挟み込んだ構造になっています。 粘弾性体として、ジエン系やシリコン系などの高分子材料が使われている、画期的なハイテク金物なのです。
※詳しくは、仕口ダンパーをご覧ください。
倉庫の入口がある一面は、すべてが窓と引き戸サッシの開口部になっていて、耐震面での不安がありました。 当初は一部の窓をふさいで耐力壁にする予定でしたが、重量の大きな機械があって動かせず、工事ができません。 そこで、外壁側から耐震補強を行うことになりました。
Before
使用したのは、外付けタイプの筋交い金物「GDブレース」です。 通常、窓に筋交いを設置することはできませんが、GDブレースなら設置することが可能です。 窓はそのまま利用できる上、壁には耐力壁と同様の耐震性をもたせることができます。
見た目もスッキリ、きれいに仕上がりました。
※詳しくは、GDブレースをご覧ください。
耐震補強が終わったら、工事のためにいったん壊した部分を元通りにします。 住居部分は、壁と床、天井に白いクロスを、床にはコルクタイルを張りました。
コルクタイルは、ワインの栓などにも使われるコルクを固めてタイルにした床材です。 ソフトな足ざわりが快適な自然素材で、正方形のタイルを敷いて施工します。
※詳しくは、コルクタイルのメリットをご覧ください。
リフォーム後のご感想
F様より
工事が無事に終わったようで、ありがとうございます。 いろいろな部分の工事を臨機応変にやっていただいて、感謝しております。
エコリフォームさんは、たまたまインターネットで見つけたのですが、今回、耐震リフォームをお願いできて、本当に良かったと思っています。
また何かありましたら、よろしくお願いします。ありがとうございました。
施工責任者
一級建築士
塩谷 敏雄
住宅に、同じものはありません。 建てられた時期や施工方法、大工さん、メンテナンスの頻度、ライフスタイルなどによって、住宅の状態は異なっています。 このため、最適な耐震補強方法も、住宅によってそれぞれ違ってきます。
事前にしっかり耐震補強計画を立てても、現場で実際の状況を見て判断しなければならないことも多いものです。 私も現場につきっきりの作業となりますが、とてもやりがいがあります。
私たちが耐震リフォームを手がけられるのは、お客様の信頼があってこそです。 信頼に現場力で応えることが、お客様の安心につながるのではないかと考えています。
東日本大震災を経験されて不安だったと思いますが、今後安心してお暮らしになるお手伝いができたことを、うれしく思います。
インテリアコーディネーター
薄井 歩
F様と初めてお会いしたとき、「住まいを早くなんとかしなければ」という思いが伝わってきました。 何を基準にリフォーム業者を選ぶか、どんな耐震補強が適切なのか、悩まれている様子でしたが、何度か伺ってお話をするうちに、私たちを信頼してくださったのだと思います。 誠にありがとうございました。
災害時に避難経路を確保するという大切な点もクリアし、解体後には耐震補強計画に修正を加えることもできました。 エコリフォームとしても、満足のいく耐震補強工事になったと思います。
また、補強後の内装工事では、私たちもおすすめするコルクタイルや、F様お好みの柄のクロスを選んでいただきました。 インテリアのイメージも変わり、内装リフォームを楽しんでいただけたかなと思います。
工事中は朝から夕方まで音やホコリでご迷惑をおかけしましたが、いつも笑顔でご対応くださって、心より感謝申し上げます。 工事が終わったとき、「これで安心して暮らせるわ」と仰ってくださり、大変うれしく思いました。 今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
インテリアコーディネーター
薄井 歩