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築90年でも大丈夫!
小さな長屋のスケルトンリフォーム
おそらく大正時代に建てられたのではないかという長屋のスケルトンリフォームをご依頼いただきました。
A様邸の築年数は90年以上、建坪約7坪の小さな長屋住宅です。亡きご両親が大切にされてきたお住まいですが、そのまま住み続けるには難しく、現代の暮らしに合わせて蘇らせることとなりました。
古い家の再生を手がけてきたエコリフォームならではの、築90年長屋ビフォーアフターをご紹介します。
ハウスデータ
築年数 | 90年以上 |
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構造 | 木造2階建て住宅(長屋) |
広さ | 建坪7坪 |
内容 | フルスケルトンリフォーム |
地域 | 東京都中央区 |
東京都中央区はその名の通り、東京23区の真ん中にあります。銀座や築地などの華やかなエリア、日本橋や人形町などの歴史あるエリア、そして勝どきや月島といった海沿いの下町エリアに分かれています。
A様邸があるのは下町エリアの一角で「木密地域」と呼ばれる古い木造住宅の密集地となっています。木密地域では家屋が近接しているため、難工事となることも少なくありません。
ご両親が遺された小さな長屋をこれからも大切にしていきたい。A様のそんな想いを形にするため、インテリアコーディネーターが工夫を凝らしてリフォームプランを作り上げました。
A様邸は築90年の狭小住宅だけあって、断熱材はまったくなく、冬はとても寒かったそうです。 トイレは和式でお風呂もなく、設備や家具も時代を感じます。玄関脇には、お母様がお仕事に使われていたミシンが置かれていました。
あまりメンテナンスもされていないようでしたが、一級建築士・塩谷敏雄が現地調査を行った結果、リフォームで再生できると判断。A様はスケルトンリフォームを決意されました。
一番のご要望は、ご自宅にお風呂を設置することでした。家の安全性も高め、これからずっと安心して快適に暮らせる家にリフォームします。
インテリアコーディネーター阿部がご提案したリフォームプランがこちらです。
Before
和室の奥にキッチンというシンプルな間取りでした。
After
▲リビングダイニングから見たキッチンのイメージ。右手は玄関になります。
Before
4畳半と2畳の2つの和室に分かれていました。
After
▲ベランダ側から見たフリースペースのイメージ。光が差し込む空間です。
耐震性や防犯性をアップし、室内を快適空間にする自然素材をご提案しました。特に断熱はしっかり行い、冬でも暖かく過ごせるお部屋にします。
A様は東京都中央区の耐震助成制度を利用されました。中央区では、昭和56年5月31日以前に着工した「旧耐震基準」の木造住宅に対して、耐震診断と補強計画の費用を区が負担するほか、耐震補強工事にも最高300万円が助成されます。
耐震助成制度を利用する際は、事前に申請した図面の通りに耐震補強を行い、工事前後の写真を提出する必要があります。
また、申請から許可までは時間がかかるため、早め早めのリフォーム計画がおすすめです。実際、A様邸の場合も申請から許可まで3ヶ月近くかかりました。
東京23区の耐震助成制度については下記にまとめています。
耐震助成の許可を得て、いよいよ着工です。耐震助成制度を利用するため、補強を行う箇所ごとに1枚1枚写真を撮影しながらの工事となりました。
木密地域にあるA様邸は隣家が近く、接道も細い路地で、外部の工事は困難です。 また、長屋のお隣と接する壁は内側からしか補強できないため、より慎重に工事を進める必要がありました。
そんな難しい工事ながらも、職人さんたちが熟練の技で築90年の家を再生した、リフォーム工事の様子をご紹介します。
※なお、A様のコメントはお客様ブログから抜粋したものです。
お清めをしてから内部の床と壁を解体しました。床下は土が見えている状態で、断熱材もまったくありませんでした。
忙しいのにお清めまでしていただき、感激です。もう、床と壁が解体できたのですか?早いですね。
屋根もボロボロ、床下も土が見えて、やはりそのままでは住めなかったですね。引き続き、よろしくお願いします。
施工責任者・塩谷の目
今回のお宅に初めてお邪魔した時の印象が強く残っています。私が育ったころの昭和の住宅が、そのままの状態で建っていました。この地域に多い二間長屋の特徴を持つ家で、これまで何度もこのタイプの住宅をリフォームした経験があります。今回も何とかなるだろうと思いましたが、なかなか大変な工事となりました。
車は入れない場所で、前面の道路も1.5mぐらいしかありません。周りには飲食店があり、その上、7坪という超狭小の住宅です。近隣に迷惑がかからないように注意しながら、手作業で搬入や搬出を行いました。築90年でかなり劣化していたこともあり、いつも協力してくれている職方の皆さんも、とても苦労したと思います。
また、中央区の耐震助成制度は東京23区の中でもかなり充実していますが、必要な書類なども多く、利用が難しい面があります。これまで何度か経験していることもあり、今回も無事に助成制度を利用することができました。
配管工事をしてから基礎を補強します。地ならしをして砕石と防湿シートを敷き、配筋。コンクリートを流し込んだら完成です。
どんどん工事が進んでいくんですね。腐食している部分や、基礎がない箇所があると聞くと、今リフォームして良かったと実感します。
コーディネーターの阿部さんが現場を見ていてくれると思うと安心です。
A様邸は住宅密集地にあり、道が細くて車が入れない立地です。
基礎を補強する際も、ミキサー車を離れたところに止め、職人さんたちがコンクリートを手作業で運んでくれました。
玄関のガラス戸を外して解体しました。玄関を移動し、ここには構造用合板で壁を造ります。
劣化した柱は仮の支柱で支えながら交換し、梁も新しくします。接合部は耐震金物でしっかり固定しました。
上棟式で建物の安全を願って飾られる幣串(へいぐし)が屋根裏にありました。築年数を考えると、かなり古いものでしょう。これまで長い間ずっとご家族を見守ってくれていたんですね。
小さい家ですが、幣串があるなんて、意外にちゃんとしていたのですね。なんか、感動しました。小さな幣串を見つけてくれて、建築当時の人々の気持ちを伝えてくれたことに感謝です。ありがとうございます!
室内の工事はユニットバスから。窓を設置し、床・壁・天井にぐるりと断熱材を施工。構造用合板で閉じて、だんだんお部屋らしくなってきました。
A様邸は長屋のため、お隣と壁を共有していますが、内側からしか工事を行えません。 しっかり補強をした上で下地を造って断熱材を入れ、構造用合板で閉じました。
丈夫な壁になり、断熱材の防音効果で、お隣にご迷惑をかけることもなくなります。
屋根はアスファルトシングルに葺き替え。屋根も共有しているので慎重に施工します。外壁はラスカットパネルの上から、モルタルできれいに仕上げました。
外壁がきれいになって、うれしいです。どんどん出来上がってきますね。完成が楽しみで、ワクワクしてきました。
階段は職人さんが手作業で造ったオリジナル。収納やフリースペースのデスクもできました。クロスを貼ったら完成です!
階段、キレイです。うれしいです。2階のスペースもカッコいいです。窓もすごくステキです。早くここでコーヒーを飲みたいです。
屋根や壁を共有している長屋ならではの難しさもありましたが、無事にリフォームが完成し、築90年以上の建物がピカピカに蘇りました。これからも安心して暮らせるようになったお住まいの様子をご紹介します。
玄関は位置を変え、少しコンパクトになりました。 玄関収納と手すりも邪魔にならないよう工夫されています。
玄関扉はガラス戸から丈夫な引き戸に変わりました。
こじんまりして落ち着くリビングダイニング。水まわりは奥にまとめて、引き戸で仕切ることができます。
窓は面格子付きで安心。玄関の方を振り返るとキッチンが見えます。
玄関脇に移動したキッチンはリクシル製。コンロはIHなので安心して使えます。
キッチン背面にはカウンターと吊戸棚を設置しました。
キッチンの背面カウンターに、扉は見当たりません。実はこれ、玄関収納なんです。 隣り合った玄関とキッチンに、半分ずつ見えている収納を造作しました。
下は玄関から収納として、上はキッチンからカウンターとして使うアイデアで、空間を最大限に活用します。
▲背面カウンター
▲玄関収納
キッチンがあった1階奥に水まわりをまとめました。今までなかった洗面とお風呂も完備です!
トイレは階段下スペースを利用して、小さな飾り棚を造り付けました。
A様は、トイレの奥の壁だけ、他とは違うクロスを選ばれました。 このアクセントクロス、ちょっと色が違うだけかと思いきや...。
よーく見ると、ムーミンが隠れているんです!遊び心がある素敵なクロスですね。
向きを変え、ゆるやかになった階段。リフォーム前と比べるとその差は歴然です。
階段下のスペースを活用して、奥行きのある収納を造作しました。写真の青い線で囲まれた部分です。
A様はこの収納を便利にお使いいただいているそうです。 掃除道具や食品のストックなど、たっぷりしまえますね。
階段を上がったところの小部屋は、明るいフリースペースに変わりました。
デスクと棚を造り付けて、在宅ワークにも使える空間です。
デスクの上に設置した棚は、高さが変えられるように設計しました。 「置くものに合わせて高さが変えられて便利!」と、A様のお気に入りになっています。
季節に合わせた小物やグリーンを飾ったり、ちょこっと模様替えしたりするのにお役立ちです。
2階廊下の両側に収納を設けました。
右手の収納は計画時にはなかったもの。階段上のスペースを見逃さず、活用しました。
2階のお部屋は和室から洋室に変わりました。
クローゼットにはハンガーパイプのみを設置。扉ではなくカーテンで仕切れるようになっています
フリースペースの窓を開けると小さなベランダがあります。洗濯物を干すのに便利ですね。
リフォーム前の写真と比べると、リフォーム後はまるで新築住宅のようです。 築90年、建坪約7坪の小さな長屋がスケルトンリフォームで見事に蘇りました。
担当インテリアコーディネーターの阿部容子と、施工責任者・一級建築士の塩谷敏雄から、リフォームを終えてのコメントをご紹介します。
ご両親が長年、大切に暮らされていた建物のリフォームは、お荷物の整理から始まりました。 A様はお仕事をされながら片付けを進めていて、大変だったと思います。 私たちがお手伝いした時には、ご両親の仲の良いエピソードをお聞かせくださって、A様がご家族や建物を大切にされていることが伝わってきました。
工事が進んで見えなくなる前に、耐震補強箇所をご説明するため、お仕事帰りのA様に現場へ来ていただきました。 収納のお打ち合わせの時は、雪が降る中、現場へ足を運んでいただきました。 お打ち合わせの時間をたくさんいただき、心から感謝しています。
リフォーム後にお邪魔した際、A様が快適にお暮しの様子を拝見して、とても嬉しく思いました。多肉植物のお話もできて楽しかったです。
ご両親から引き継がれた建物と、A様らしく快適に暮らしていただければと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
インテリアコーディネーター 阿部 容子
スケルトンリフォームは、プランニングでほぼ決まります。耐震補強の数値を確保しながら、お客様にとって最善のプランにするのは、かなり大変です。長年一緒にやってきた設計協力の加藤さんと、コーディネーター阿部のおかげで、細部にこだわった良いプランになりました。
何しろ、建築後90年建っている建物です。私の父でもやったことのないような長屋の改修を、私が誇るスタッフと職方の力で見事に仕上げ、建物を蘇らせることができました。何度やっても長屋の改修は大変です。現場では数多くの困難もありましたが、出来てしまえば自慢の建物となりました。
ご家族が長年大切に暮らされてきた家だからこそ、リフォームで蘇らせることができて、まだまだ現役で頑張ってくれるようになったと思います。このリフォームに携わることができて本当に感謝しています。
この家でどうか健やかにお暮しください。色々とお気遣いいただき、ありがとうございました。
リフォームが終わり、A様は愛着あるお住まいで、新しい暮らしを楽しまれているそうです。
これからも末永く、安心して快適にお過ごしいただけるよう願っています。
この度は、リフォームをご依頼いただき、誠にありがとうございました!
A様邸リフォームプランについて
A様邸は築年数が長く、耐震補強を行って建物を強固にすることが一番の目的だったため、施工の塩谷と相談をしながら間取りを考えました。1階に水まわりを集中させて、2階は広いスペースを確保しています。
階段を上がったところには大きな窓があり、ただの廊下にしてしまうのはもったいないので、フリースペースとしてご提案しました。大きなデスクと飾り棚を設置して、パソコンを開いてテレワークをしたり、コーヒーを飲んでくつろぐこともできます。A様も提案を気に入ってくださいました。
面積が限られている中で、より快適に暮らしていただけるようなプランになったと思います。
内装は極力、自然素材をお選びしました。無垢のフローリングは木目がおとなしいカバザクラなので、どんなインテリアでも合わせやすいナチュラルな雰囲気です。
インテリアコーディネーター 阿部 容子